「税務研究会出版局」という聞きなれない出版社から刊行されている書籍。
調べたところ「税務研究会」という会社があるらしく、その業務内容は「税務、経理、会計などの実務情報サービスとして、定期刊行物、書籍、データベースなどを展開」。
どうやら税務関係の本を出版する専門出版社のようです。
このような本を手に取った理由を申し上げますと、以前に「日本の税金 第3版」を読んだ際にその中で法人税のことが少しだけ取り上げられておりまして、仕事柄、法人税の知識が必要な場面があるにも関わらず体系的に勉強したことがないなと手に取ってみた次第です。
しかし、結果としては大幅な期待外れに終わりました。
目次
第1章 法人税の基礎
第2章 収益の税務
第3章 費用の税務
第4章 税額計算と申告・納付
第5章 連結納税制度
第6章 グループ法人単体課税制度
感想
ある程度経理の知識があり、なおかつ税務にも興味があってその入門本を探している。
そのような場合、本書を手に取ることはお薦めいたしません。
まさにその2点にこそ、本書の欠点が凝縮されているからです。
第1の欠点は、「会計」に加えて「税務」も知りたいと思って手に取ったにも関わらず、個々の論点やケーススタディについて「会計上」利益・損失を計上しなければならないか否かについて膨大なページ数が割かれていることです。
よって、読み始めてすぐに、これは「経理」の基本さえ知らない人向けに書かれた本だということが分かってしまいます(「減価償却とはどういうことか」という節さえあります)。
しかしおそらく、本書を手に取る人が本当に知りたいのは「益金」「損金」といった税務独特の考え方だけ。
確かにそういった要素も載ってはいるのですが、「経理」について知らない人のためにまず「経理」的な考え方を解説してから「税務」に移行するという形をとっているため、「法人税入門の入門」でありながら税務に特化した記述が薄いという事態に陥っています。
第2の欠点は、記述の方法があまりにも機械的であることです。
会計上の処理についても税務上の処理についても、「法律で~することに決まっているからこうするんだ」という記述に終始しており、その背景にあるはずの会計的税務的「べき論」には一切触れられておりません。
本当に会計や税務の分野を学びたい人にとってはそういった「意味」や「思考枠組み」が最も重要となり、ケーススタディはそれを具体化するために存在するはずです。
しかし、本書はまるで、勉強に興味のない生徒に丸暗記を課すがごとく「こうすることになってる」を繰り返します。
中小零細企業向けのフォローも多いことから、もしかすると「会計」や「税務」を面倒くさい副次的業務だと考えている中小零細企業経営者向けなのかもしれません。
結論
というわけで、少なくとも私のニーズには全くマッチしない本でした。
思考停止で限りなく形式的に税務申告を済ませたい、ずぼらな経営者は読んでみたらよいのではないでしょうか。
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